通訳案内士、外国人の前で知識を披露してカッコイイ仕事と思われがち。だが実は肉体労働でもある。まず歩く距離が尋常ではない。荷物も多い。見せるものも多く、身振り手振りも最大限に利用する。手足を使う仕事ということは体幹も大事だ。なので普段から体感を鍛え、しなやかな手足が自由に使えるように心がけている。
体力を使うかは個人差がある
私の場合、観光バスの中ではどっかり座ってる事はない。ただ最近は走行中に立ってると運転手さんに怒られてしまう。そこで最前列通路側にシートベルトをして座るのだが、上半身はお客様の方に捻り、腰を浮かせ中腰状態になってる時間が多い。実質は後ろ向き状態だ。
私はお客様の方を見ないと話せない。バスの急ブレーキにも耐えられるように大股開きで中腰で、これはかなり下半身の強化になるのだが、同時にかなりの背筋と腹筋を使っている。
かなりすごい姿勢だと思う。が、大事なのはお客様に伝わること。自分の伝えたいことを伝えやすい体制であるということ。車窓のもの見てもらうにしても言葉だけでなく指差しで伝える。これらは伝えたい気持ちがあると自然に出てくるものだと思う。
こんなことを書くと物凄い疲れる仕事だと思われがちだが、実はスマートに座って案内してるガイドさんもいる。ガイドのタイプだけでなく。お客様の国民性やタイプにも寄るのだと思う。私のお客様は結構のってくるとこちらの説明に相槌を打ったり、茶々を入れてくる人も多い。それは私がガイドの一方的な説明にならないように、お客様参加型にしているからだ。
歩くのが億劫な人はガイド向きでない
さて、コロナでインバウンドがゼロとなった時、一番に懸念したのが体力の低下だ。
特に歩く習慣を失わないように、毎日1時間くらいの散歩を心掛けた。自転車は廃止して駅までも20分歩いた。コロナ後、インバウンドが復活した時に歩くのが辛くなってしまっては元も子もない。
たくさん歩くためには、それが体の負担にならないために優れた体幹も必要だ。ガイドは肉体労働である。頭脳労働でもあるけど、その前に健康な体が資本なのは間違いない。
まずは歩くこと。東京都内観光、京都観光など、大都市の観光は何しろ歩く。駅から観光地、バスの駐車場から観光地もかなり歩く。歩くのが嫌な人はガイドにはいないと思う。
🔸東京観光、一日どのくらい歩く?
万歩計をつけてるお客様が、「昨日の都内観光、なんと18キロも歩いたぞ!」と教えてくれた!
全員が驚愕!普段お国では車を使う生活で、歩くことなんて殆どないそうだ。そのグループは11名様のため専用バスがつかず、メトロを使って都内観光だった。
たいてい15名以上でないとバスがつかないことが多いが、中には11名以上で中型バスをつけてくれる富裕層ツアーもある。
一方、FIT(個人客)も最近はハイヤー利用はすくなく、共交通機関の利用がほとんどだ。
🔸専用バスがあっても11キロは歩く
では専用の観光バスがついてるグループの場合の歩く距離はどのくらいになるのか?訪問箇所にもよるが、万歩計アプリで計測したところ平均すると11キロとだった。
観光バスで18キロ、メトロ等の公共交通機関でと11キロ!
これは普段歩いてない人にとってはどちらも「トレッキングに匹敵する距離」らしい。が、私は普段からかなり歩いてるし結構運動をしているのでそれほど驚かない。それでも連日の勤務になるとキツい。
🔸足がつる50代
そんな鍛えてる私でも、11キロと18キロは疲労度が違う。
18キロ歩いた日は終わってから疲れがどっと来る。繁忙期には足がつることも多い。
🔸専用バスがある団体の方がラク?
明治神宮も皇居も団体は専用バスで行けるので、歩く距離はメトロ利用よりは少なくなる。
が、団体のご案内は別の問題があり、それは”アドレナリンが引っ込まない問題”である。
例えばお客様が20~40名等の大人数で、全員がアクティブ、各自の要求が多い、みんな同時に話しかけてくる、集合時間に数人足りない。こんなグループはまとめるのが肉体労働だ。
感じとしては、アメリカ映画のスタンドアップコメディアンを一日中していたような感じの精神状態で、お客様のノリがいい場合はガイドもエキサイトしてしまうのだろうな。よくコンサートから帰ってもまだ興奮している、あの感じに似ている。
🔸止まらない私のアドレナリン
これはガイドの性格にもよるのか?私のように身を削って仕事をするタイプは寿命を縮めてるのか?
皆さんは遠足や運動会の前夜に眠れるタイプでしたか?私はワクワクしすぎて眠れない、アドレナリン過多タイプでした。
23時回っても興奮してる私によく旦那は「少し仕事量減らしたら?」と言う。しかし「仕事はゼロにしては駄目だね、君のようなタイプは生きがいを失っちゃうね」とも…。回遊型のマグロタイプなのか。
まだ興奮してる私は目がらんらんとして「何しろ楽しそう」らしい。結局朝まで興奮してあまり眠れなかった、繁忙期にはこのような日が何日も続く。
🔸こうなったらとことん付き合うか!
コロナが明けた今、仕事が次々と入ってくるのは嬉しい。が、以前ほどの多くのツアーを入れるのはやめようと思う。が、まだまだ日本が人気で、日本に行きたい、と思ってくれるのは有難いことだ。お客様が日本に来て下さるうちは「体力が続くまでとことん付き合おう」と思ってる。
ガイドが倒れてはダメ、これはお客様に迷惑がかかる。くたびれてないか、いつも光り輝いてる自分をお客様に提供できているか、この辺が見極めなのだろうか。
🔸繁忙期、よく足がつるので整体に行くと…
私「マグネシウム足りないのかなあ」
先生「違う、わかってない。50代の筋肉に対して負荷をかけすぎだよ!」
(開口一番に怒られた)
先生「原因は筋肉疲労。疲労が取れないうちに翌日また歩いてしまう。若いうちなら回復が早い。しかし50代の筋肉は弾力も柔軟性も落ちてるからね」
(なるほど…)
先生「ネットの健康情報を見て、ああ、マグネシウム取らないと、とか思ってはダメ。みんなマグネシウムやカリウム取ってればいいと勘違いしてる」
(これはありがち)
先生「要するに筋肉は酷使せず、休ませて回復させること」
(はい、わかりました)
歩行能力と体力を維持、疲れは貯めない、活性酸素は増やさない、十分な休息で次のツアーに備える。これは心がけないと、繁忙期には仕事に追われ忘れがちだ。次の桜の季節には十分気を付けて臨もうと思う。