インバウンドのガイドの下見は博物館や寺社、ホテルや駅だけではない。とても大事なのが食の下見、つまり飲食店の下見だ。お客様にとっては日本の限られた時間での食事。「一食損した気分だ」こんな事になっては申し訳ない。
多様化するインバウンド客の食事事情
以前の日本観光は、大型バスを使って、お昼ご飯は浅草の老舗天ぷら屋でなどとお決まりのコースがあった。が、近年のインバウンドは多様化し、少人数でもガイドが付き、乗り物は公共交通利用、ランチは含まれてなくその場でお客様と決める、このようなケースが多い。
また団体でもランチは自由食、つまりどこかで昼食時にフリータイムにしなくてはならない。その時にただお客様をばらすのではなく、お蕎麦はここ、お寿司はここ、天ぷらはここがありますよ等、ある程度のヒントを与えることが要求される。
このような多様化はやはり世界中で日本食への人気が高まってるからと言える。
みんな大好き、日本のラーメン
さてそんな中、最近とてもニーズが高いのがラーメンだ。以前はラーメンと言われたら「●●エリアの××店に案内すれば間違いない」など、各ガイドにはお気に入りのラーメン屋さんがあった。
だが最近はどうも一店頼みでは済まされないこともある。
例えばとても美味しくて便利だった浅草の一風堂。残念ながらコロナ後に閉店してしまった。
同店は豚骨スープでも重くないし、餃子やご飯もののサイドメニューもあり、また外国人にも慣れててサービスもよく、広い店内は少し待てば座れた。本当にいいお店だった。
ラーメンと一括りに出来なくなってきた
またお客様の好みも多様化し、同時に日本のラーメンも多様化している。
以前、こんなお客様がいた。「ここは豚骨スープ、つまり豚の骨の出汁で…」と言ったとたんに「豚の出汁は私は嫌」と即座に拒否された。また店舗によっては店頭での匂いが強烈らしく、我々日本人が慣れてしまった獣臭を敏感に感じ取るお客様もいる。
そうかと思えば「私は普段から鶏の出汁は食さない」と言い出すお客様も。鶏の出汁など万人ウケするのかと思っていた。私が「いえ、鶏肉の臭みは殆ど感じられないんですよ」などと言って無理やりお連れしても「確かに食べられはしたけど、私の味覚には合わなかった」などと言われてしまっては元も子もない。
なので出来るだけ手札は多い方がいい。ということで私のラーメン屋の下見はこうして始まった。あくまでも目線はお客様のご案内にふさわしいお店かどうかということ。そしてもう一つ。ガイドが下見が苦になってはダメなので、楽しんで下見をするということである。
どのエリアで昼食になるかわからないスリル
さて手札は多い方が良いのだが、まずどのエリアでランチタイムになるか未知だということだ。
浅草の情報ばかり集めても、その手前の上野でお客様が「お腹すいた~!」となることも。なので自分の中で渋谷、新宿、銀座、上野、浅草など、各エリアで、天ぷら、鮨、そば、定食、ラーメン、焼肉などのバリエーションがあればよいと思う。
で、今回はラーメン特集ということでエリアを問わずに支店があるお店を中心にいくつか選んでみた。
(店名でネット検索してみてね)
●阿夫利(AFURI)
写真はゆず塩ラーメン。あっさりだが、よくある外国人が理解できないボヤけた味ではなく、外国人には好まれるあっさりだと思う。
同店は支店はたくさんあり、どこもカウンターは広く、食券方式。新宿駅ルミネの地下の店は列ができてる事が多い。この写真は西新宿の住友三角ビルの地下の店舗。西新宿のホテルに泊まるお客様にはお勧めできるかも。が、この店舗だけ閉店時間が早く20時には閉まってしまう。
この店の特徴はビーガンラーメンがある事。だが高額で1580円だったかな。まあビーガンでラーメンを実現するのだから仕方ないとは思うが。
●一風堂
前述の一風堂はNYやロンドンにもお店があり、外国人の口に合うという定評がある。
外国人にとってはこのようなハッキリした味が受けるのだと思う。
浅草店が閉店した今となって使い勝手がいいのは銀座店だ。
そして同店とライバル関係にあった一蘭だが中華系観光客の間で爆発的な人気で、どこも長蛇の列で入店するのは不可能となってしまった。
●大阪王将や餃子の王将などのチェーン店
このようなチェーン店的なラーメン屋さんが意外にもウケることがある。
餃子があるのも得点は高い。チャーハンもありがたい。
ただし店によりメンテナンス系に差がある。というのは王将系でないのだが、あるチェーン店はテーブルの調味料回りなどの清潔感に問題があり、お客様に見せたくないような”ホコリ”や”カス”が気になった。
たとえ安くて美味しくても、生理的に落ち着かない店はダメだと思う。
さて、ここからはチェーン店でないが美味しくてお薦めしたいお店。
●つじ田(銀座)
ここは松屋デパートの裏にあり、広めのカウンターが気持ちよく、席数も多い。
何と言ってもホールにスタッフさんがいて、食券を買うのなどを手伝ってくれる。英語のメニューもあるのでお客様だけで行ってもよい。ただしテーブル席はないので2人くらいで行った方がいい。
ちょっと絵柄が地味で申し訳ない。煮卵を付けるべきだったかな。が、味はおいしかったですよ。
そしてホールの店員さんが迷ってるとオーダーを手伝ってくれて、「そちらのカウンター席でどうですか」などと面倒見がいい。スタッフはみな若くて、「らっしゃ~い!」などと元気がよく、外国人にとっては面白いかも。
こういう店は、インバウンドのお客様が行ってもアウェイになることはないでしょうね。
●創龍(銀座)
最近の銀座の人気ラーメン店はカウンターだけのお店が多く、外まで並んでる。Ginza SIXの裏がそんな感じで激戦区だ。それらのお店はインバウンドの案内としては対象外となる。
こちら創龍は中は広めで、オシャレ、味もよく、お客様も満足だった。
後ろに見えてるのはハイボールで、お客様は「カクテルを食事に合わせるの?」と驚いていたが、私が「薄いのでアルコールが入ったジンジャーエールみたいなものですよ」と言うと「ほんとだ!」と新たな発見だったようだ。それまではB級グルメにはビールくらいと思っていたが、「ハイボールも餃子やお好み焼きに合うね」と、関西に行ってからも飲んでいたとメッセージが来た。
夕方にラーメン屋にお連れしてよかった。いつもはお水を飲む私も、このお店にはアペリティフ的に何か飲みたくなる雰囲気があるんだなあ。
下見のポイント
1.味が外国の人に喜ばれるか
昭和のラーメンで、しょっぱくてまったくウケなかったこともある。
2.店内が清潔か
味は美味いのだが、汚くてオヤジが頑固。調味料がべとべと、床もネトネト。
汚なトランは外国人のご案内には向いてない。
3.広いかどうか
ネットで大人気だけど、カウンター6席しかない。こんな店が意外と多い。
ガイドとお客様2名で計3人、3席が同時に空くのは不可能。残念ながら下見の対象外に。
4.オモテナシ感ゼロはダメ
暗黙の了解で勝手に食券買って並ぶような、ローカルルールがある店、意外とある。
日本人でも常連以外は勝手がわからない店。店主も「はい、どうぞ」的なケアがない。
英語ができなくてもおばちゃんが優しいとか、日本人の我々もそうだものね。
まあ、お客さんと店に入ったのに感じの悪い店はたとえおいしいと評判の店でもアウトです。下見の時も、なかなかオーダーも取りに来ない店なら出る勇気も必要。つまり下見自体の対象外です。
というわけで、あっさり系、こってり系、チェーン店系、そして個人的に好きなお店をご紹介しました。今回も長々とありがとうございました。
次回は第②弾で「変化球編」です。お楽しみに。
なお今回はラーメン屋にスポットを当ててますが、他にも鮨編、天ぷら編、焼肉編など、各エリアに各ジャンルの料理をリスト化しています。また時間があれば投稿しますね。
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